TCFD・TNFD提言に基づく情報開示
当社は、2022年10月、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)※1の提言に賛同を表明し、これに基づく情報開示を行ってまいりました。パリ協定で議論されているCO₂排出削減レベルを考慮し、2030年度の温室効果ガス(GHG)の排出量の削減目標(Scope1,2)を2020年度比で23%とし、マテリアリティのひとつに掲げて取り組んでいます。社内の省エネや節電を心掛けるとともに、再生可能エネルギーの利活用や製造現場における脱炭素技術の導入などにより、GHG排出量を削減し、脱炭素社会の実現を目指しています。
TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)※2については、2022年12月に昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、2050年ビジョン「自然と共生する世界」や、2030年ミッション「生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる=ネイチャーポジティブ」などの具体的な目標が掲げられ、日本政府も「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定し、目指すべき方向性が示されました。
当社も生物多様性に対する取り組みを強化することを念頭に、2025年7月にTNFD情報開示提言に賛同し、「TNFD Adopter※3」に登録しました。ステークホルダーの皆さまに対しては、TNFD提言とフレームワーク※4に沿って当社の気候変動関連、自然資本関連情報を開示しながら対話を進めていきたいと考えます。ステークホルダーの皆さまからいただいたご意見を参考に、今後もTNFDの取り組みを推進するとともに、積極的な情報開示を行い、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
※1:G20の要請を受けた金融安定理事会により設置された、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するための気候関連財務情報開示タスクフォース。
※2:企業・組織が自身の経済活動による自然資本および生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みの構築を目指す国際イニシアチブ。
※3:TNFDの提言に沿った情報開示を行う意思をTNFDのWebサイト上で登録・宣言した企業・組織。
※4:TNFDフレームワークでは、企業の事業活動が自然資本や生物多様性との関係性(依存と影響)において、どのようなリスクと機会があるかを評価・開示することを求めている。
ガバナンス
当社は、企業理念に立脚して様々なステークホルダーと良好な関係を築き、信頼され必要とされる企業となるため、CSR(企業の社会的責任)活動から、企業活動を通じた価値創造により、すべてのステークホルダーに貢献するサステナビリティ活動へ軸足を移し、スピード感を持った活動を推進するため、2022年にサステナビリティ推進委員会を設置しました。
サステナビリティ推進委員会は、社長が委員長となり、サステナビリティ基本方針をはじめとしたサステナビリティに関する事項の審議を行います。
サステナビリティ推進委員会の下にサステナビリティ委員会を設け、気候変動や生物多様性を含む自然資本への対応、環境貢献製品の認定など、サステナビリティに関する取り組みを推進しています。
取締役会は、サステナビリティ推進委員会で審議された重要事項についての報告や提言を受け、気候関連および自然資本課題への対応方針および実行計画等についても指示・監督を行っていきます。
■ ガバナンス体制
サステナビリティ推進委員会
サステナビリティ推進委員会は社長を委員長として、ESGやSDGsにかかわる内外の情勢を踏まえて、サステナビリティ基本方針をはじめとしたサステナビリティに関する事項の審議を行い、定期的に取締役会に報告や提言を行う。サステナビリティ推進委員会の下に、「サステナビリティ委員会」、「全社RC委員会」、「NBCP(日本化学事業継続計画)運営委員会」、「倫理委員会」の4つの委員会を配置し、サステナビリティ推進委員会はこれら4つの委員会の活動を統括・指導し、定例会議等を通じてマネジメント強化と推進に努める。
サステナビリティ委員会
サステナビリティ委員会は常務執行役員の下ですべてのステークホルダーへの価値の提供や、気候変動や生物多様性を含む自然資本への対応など、サステナビリティに関する取り組みを推進する。
全社RC委員会
全社RC委員会は社長を委員長とし、環境・安全におけるレスポンシブル・ケア活動を推進し、法規制の遵守、環境保全、保安防災、労働安全衛生、製品安全、物流安全等のレベルの維持・向上に努める。
NBCP(日本化学事業継続計画)運営委員会
NBCP運営委員会は生産技術本部を担当する執行役員を委員長とし、顕在化した危機および潜在的な危機に対する方針や計画、訓練の継続的改善を推進している。
倫理委員会
倫理委員会は事業推進本部を担当する執行役員を委員長とし、日々の企業活動において遵守すべき行動指針の周知徹底を図るとともに、定期的に遵守状況の確認を行い、継続的な改善に努める。
自然関連のステークホルダーエンゲージメントについては、人権方針や調達方針にサプライチェーン全体における人権の尊重を掲げて取り組んでいます。
また、2023年12月に制定した生物多様性行動指針において、以下の4つの行動指針を定め生物多様性保全活動を計画・推進しています。
- バリューチェーン全体を通して、当社の事業活動が生物多様性に及ぼす影響を把握し、その影響を最小限に抑えることに継続的に取り組みます。
- レスポンシブル・ケア活動を通じて、社員一人ひとりの生物多様性に対する意識向上に努めます。
- 社会や地域の皆さまから高い評価が得られるよう、生物多様性保全に寄与する社会貢献活動を継続していきます。
- 以上の取り組みを積極的に開示し、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを深めます。
リスクの影響と管理
当社では、リスク管理規程に基づき、事業の特徴や事業を取り巻く環境を考慮しながら、リスクが事業活動に与える影響度を分析し、サステナビリティ推進委員会の枠組みの中でリスクを管理しています。各部門において気候変動関連・自然関連リスクを含むすべてのリスクを洗い出し、各部門の責任者からなる会議体(本部長会議)により、それらリスクを分類し一覧にまとめ、発生頻度のレベル、影響度のレベル、コントロールのレベルによって評価しています。評価されたリスクについて、原因・予知・訓練・再発防止等の根本的な解決策をサステナビリティ推進委員会で検討することにより、発生を未然に防ぐ対策を講じています。リスクの評価は年に1回の頻度で行います。
当社では、リスクの洗い出し、発生頻度、影響度、コントロール等に基づいたリスクの評価とリスクへの対応を行う仕組みと体制を構築しています。重要リスクについては、毎年見直しを行っています。
自然への依存・影響については、直接操業、バリューチェーン上流の客観的・定性的な重要性に着目し調査地域を特定し、それらのリスクを評価しました。2024年6月に策定(2025年7月に改訂)した日本化学工業の調達方針をもとに、サプライヤーと協働して環境負荷低減に取り組んでいます。
また、気候変動リスクの定量的な把握を行うために、2024年4月よりインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入しました。低炭素・脱炭酸設備の設備投資計画において、ICP(3,000円/MT-CO₂換算)を適用して費用換算し、投資判断指標のひとつとして運用しています。
戦略1. 気候変動
近年地球温暖化が原因と思われる大規模な山火事や洪水が世界中で多発しており、気候変動が社会に及ぼす影響は年々深刻さを増しています。国際社会は脱炭素社会の構築に向けた動きを加速しており、企業にも確実な対応が求められています。
当社も、気候変動への対応は重要な課題であると捉え、2030年度の温室効果ガス(GHG)排出量を2020年度比で23%削減することを目標に掲げました。また、環境課題の解決に貢献する製品、ライフサイクル全体を通して環境改善に貢献する製品を「環境貢献製品」と定義し、これらを積極的に市場へ提供する方針を立て、環境貢献製品の対全売上高比率をKPIに掲げ、全社で取り組んでいます。
ステークホルダーの皆さまに当社の活動内容をご理解いただくため、今後もGHG排出削減の経過報告、廃棄物の発生量や環境負荷物質の排出量、環境貢献製品の売上比率など、気候変動関連の情報を開示し、当社の企業価値向上に努めていきます。
シナリオ分析、リスクと機会
1.5℃シナリオ※1
気候変動に対し厳しい対策が取られ、2100年時点において、産業革命時期比の気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオ。気候変動対応が強められ、政策規制、市場、技術、評判等における移行リスクが高まるシナリオ。
※1:インパクトを試算する際のパラメーターは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)の情報を参考にRCP2.6シナリオを使用。
移行リスク・機会:脱炭素シナリオ(1.5℃)
移行リスク・機会については、1.5℃目標達成に向けて、低炭素経済への移行に関連した様々な規制などが導入される脱炭素シナリオに基づいて検討しました。
脱炭素シナリオ(1.5℃)においては、政府の環境規制強化に伴う炭素税導入や、再生可能エネルギー需要の増加による価格上昇など費用の増加、世界規模での地球温暖化対策が講じられることによる資源調達費用の増加が想定されます。
一方で、当社の成長分野の製品である電子セラミック材料、RFID向け導電性接着剤などの機能性材料では脱炭素イノベーションの高まりにより研究開発が推進され、当社の環境貢献製品の需要増加が想定され、ビジネスチャンスが増えていくものと考えています。また、当社では、当社の生産工程で排出されるCO₂の削減を重要な課題と認識しており、再生可能エネルギーの活用や製造現場における脱炭素技術導入などにより、CO₂の削減に取り組んでいます。
調達面においては、サプライヤーとのコミュニケーションを通し、安定調達を継続しつつ原材料にかかわるCO₂の削減を目指していきます。
4℃シナリオ※2
気候変動への厳格な対策が取られず、2100年時点において、産業革命時期比で4℃程度気温が上昇するシナリオ。自然災害の激甚化、海面上昇や異常気象の増加などの物理的リスクが高まるシナリオ。
※2:インパクトを試算する際のパラメーターは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)の情報を参考にRCP8.5シナリオを使用。
物理的リスク・機会:温暖化進行シナリオ(4℃)
物理的リスク・機会では、異常気象による自然災害の発生に伴う、事業活動の停止やサプライチェーンの断絶が大きなリスクとなります。
自然災害は、発生の予測が難しく、一度発生すれば、当社の製造拠点が被災し、化学物質の漏洩など甚大な被害をもたらす可能性があります。設備損傷や化学物質漏洩による操業停止などを回避するためには、災害対策に関する設備投資が必要となり、これによる製造コスト上昇も想定されます。温暖化進行シナリオ(4℃)では、この傾向はさらに強まることが想定されます。
当社では気候変動リスクを含む大災害に対応できるよう、専門の委員会を設置しBCP(事業継続計画)体制を全社ベ一スで策定し、緊急時においても事業活動への影響を最小限にとどめるよう備えています。引き続き、BCP体制の継続的改善を推進していきます。
■ リスクと機会
気候変動1.5℃シナリオと4℃シナリオにおけるリスクと機会を下記に示します。
(1)気候変動1.5℃シナリオ(移行リスク・機会)
| 機会の項目 | 世の中の変化 | 想定されるシナリオ | リスク | 機会 | 発生時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 政策・法規制 | GHG排出量・環境配慮に関する規制強化 | 規制対応にかかるコスト、脱炭素移行コストの発生 | △ | 中・長期 | |
| 市場・技術 | 炭素税、排出権取引の導入 | 炭素税、排出権取引の導入コストの発生 | ◎ | 中・長期 | |
| 低炭素・脱炭素移行の急進 | 設備投資、再生可能エネルギー転換コストが発生 | △ | 短・中期 | ||
| 業界団体・政府によるカーボンニュートラル宣言 | 再生可能エネルギーの活用によりCO₂削減が促進される | ○ | 短・中期 | ||
| 脱炭素関連製品の開発・普及 | 脱炭素化市場の拡大に伴い、当社の環境貢献製品の売上げが増加し、収益が向上 | ◎ | 中・長期 | ||
| 資源価格の高騰 | 低コストで製造可能な生産国の海外企業が台頭し、当社の競争力が低下 | △ | 長期 | ||
| 原材料の調達コストが増加 | ○ | 中・長期 |
(2)気候変動4℃シナリオ(物理リスク・機会)
| 機会の項目 | 世の中の変化 | 想定されるシナリオ | リスク | 機会 | 発生時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 評判 | 脱炭素未対応、CO₂高排出企業への評価が厳格化 | 川下産業でバリューチェーン全体のCO₂削減が求められ、当社および生産ラインでの取り組みによって需要が変動 | ○ | ○ | 中・長期 |
| 慢性 | 降水・気象パターンの変化(降雨量の増加、平均気温の上昇) | 降雨量増加時における従業員の安全性の確保 | △ | 長期 | |
| 操業が停止あるいは生産量が低下すると、売上げの減少、製造設備に対する減損損失が発生するリスクがある | △ | 長期 | |||
| 急性 | 異常気象(台風、山火事、洪水、暴風雨)の激甚化および増加 | 自然災害により原燃料の供給が停止 | ○ | 長期 | |
| 工場被災による化学物質の漏洩リスクが発生 | ○ | 長期 | |||
| 主要拠点において、災害対策に関する設備投資コストの発生 | ○ | 中・長期 |
◎ : 影響が大きい ○ : やや大きな影響 △ : 影響は軽微
- ※影響が大きい:事業および財務への影響が非常に大きくなることが想定される
- ※やや大きな影響:事業および財務への影響がやや大きくなることが想定される
- ※影響は軽微:事業および財務への影響は軽微であることが想定される
- ※短期・中期:現在~2030年以内に発生する可能性が高い
- ※中・長期:2030年~2050年の間に発生する可能性が高い
- ※長期:2050年以降に発生する可能性が高い
指標と目標1. 気候変動
2020年度の当社グループの温室効果ガス排出量は、Scope1(事業による直接排出)は29,117t、Scope2(電力消費による間接排出)は34,239tとなり、合計63,356tでした。
当社では、脱炭素社会の実現に向けて、パリ協定で求められるCO₂排出削減レベルを考慮し、Scope1およびScope2の排出量について、2020年度の排出量63,356tを基準に、「2030年度23%削減」の目標を設定しました。
社内の省エネ、節電を心掛けるとともに、再生可能エネルギーの活用や製造現場における脱炭素技術の導入などにより、温室効果ガス排出量を削減し、脱炭素社会の実現を目指します。
GHG排出量と中期削減目標
当社グループのCO₂排出量はGHGプロトコルに基づいて算出しており、信頼性と透明性の向上のため第三者機関による検証を受けています。
■ GHG排出量(t)
■ Scope3のカテゴリ別内訳
| Scope/カテゴリ | カテゴリ | 2022年度 CO₂排出量 |
2023年度 CO₂排出量 |
2024年度 CO₂排出量 |
|
|---|---|---|---|---|---|
| (t-CO₂) | (t-CO₂) | (t-CO₂) | |||
| Scope3 | 全カテゴリの合計 | 212,874 | 190,722 | 217,211 | |
| Scope3 内訳 |
カテゴリ1 | 購入した製品・サービス | 163,369 | 145,798 | 179,636 |
| カテゴリ2 | 資本財 | 13,185 | 8,260 | 8,630 | |
| カテゴリ3 | 燃料およびエネルギー関連活動 ※Scope1,2 に含まないもの |
10,986 | 9,367 | 6,981 | |
| カテゴリ4 | 輸送、配送(上流) ※調達物流、横持物流、自社が荷主の出荷物流 |
19,587 | 21,202 | 16,183 | |
| カテゴリ5 | 事業から出る廃棄物 | 600 | 816 | 703 | |
| カテゴリ6 | 出張 | 222 | 318 | 438 | |
| カテゴリ7 | 雇用者の通勤 | 588 | 676 | 550 | |
| カテゴリ8 | リース資産(上流) | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
| カテゴリ9 | 輸送、配送(下流) ※出荷輸送(他社が荷主輸送)、倉庫での保管、小売店での販売 |
算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
| カテゴリ10 | 販売した製品の加工 |
算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
| カテゴリ11 | 販売した製品の使用 | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
| カテゴリ12 | 販売した製品の廃棄 | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
| カテゴリ13 | リース資産(下流) | 4,338 | 4,286 | 4,091 | |
| カテゴリ14 | フランチャイズ | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
| カテゴリ15 | 投資 | 算定対象外 | 算定対象外 | 算定対象外 | |
※ 2022年度排出量は、第三者保証は受けておりません。
戦略2. 自然資本
LEAPアプローチ
当社では、自然資本に関する評価・管理を行うために、TNFDが開発したLEAPアプローチを使用して解析を行っています。LEAPアプローチは、Locate(自然との接点の発見)、Evaluate(自然への依存と影響の特定・評価)、 Assess(自然に関するリスクと機会の評価)、Prepare(対応と報告の準備)の4つのプロセスから構成されます。
Locate:自然との接点の発見
対象範囲について
Locateフェーズでは、直接操業とバリューチェーン上流(原料、燃料)を対象範囲としました。直接操業として、国内生産拠点4ヵ所すべてを選定しました。バリューチェーン上流については、SBTs for Nature(SBTN)※1が公表しているHigh Impact Commodity List※2に掲載されている製品を提供し、かつ当社事業に関係が深い4社と、売上比率の高い製品の原燃料のサプライヤー4社の計8社を選定しました。これらの周辺の自然の状態を下記のツールで分析し、要注意地域の特定を行いました。
- ※1:企業や都市が科学に基づいて自然関連目標を設定することを促すフレームワーク。
- ※2:SBTNが自然への影響が大きいとされるコモディティ(原材料)をリスト化したもの。
要注意地域の特定
要注意地域の特定には、SBTNで推奨されている分析ツールやデータベースを使用しました。要注意地域として、TNFD提言が挙げる以下5つの基準のうち1つ以上に当てはまる場所を特定しています。
- 生物多様性にとって重要な地域(分析ツール:IBAT※1)
- 生態系の完全性が高い地域(分析ツール:GFW※2)
- 生態系の完全性が急速に低下している地域 (分析ツール:GFW)
- 物理的な水リスクが高い地域(分析ツール:Aqueduct※3)
- 先住民、地域社会、ステークホルダーへの便益を含む、生態系サービスの提供にとって重要な地域(分析ツール:GFW)
- ※1:Integrated Biodiversity Assessment Tool (生物多様性評価ツール)の略。
- ※2:Global Forest Watch(高解像度の衛星画像を利用して地球規模で森林をモニタリングするオンラインシステム)の略。
- ※3:WRI(World Resource Institute:世界資源研究所)が提供する水リスクに関するデータプラットフォーム。
IBAT分析
調査対象である当社国内生産拠点4ヵ所とサプライヤー8社について、生物多様性にとって重要な地域を特定するために、IBATの4つの指標(WDPA※4、KBA※5、IUCN※6絶滅危惧種STAR※7、IUCN管理カテゴリ)を用いて分析しました。
調査対象エリアは、WDPA、KBA、IUCN絶滅危惧種STARは生産拠点(供給拠点)から半径50km圏内、IUCN管理カテゴリは0km圏内としました。
- ※4:The World Database on Protected Areas(世界保護地域データベース)の略
- ※5:Key Biodiversity Area(生物多様性重要地域)の略。
- ※6:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources(国際自然保護連合)の略。
- ※7:Species Threat Abatement and Restoration(種の脅威の軽減と生息地の復元に関する指標)の略。
■ IBATデータマップ
(STAR Threat Abatement 5 km resolution、東アジア地域)
IBATによる分析結果(直接操業、バリューチェーン上流)
解析の結果、国内生産拠点4ヵ所については、WDPAとKBAにおいて全拠点が該当し、IUCNレッドリスト生物種数において2ヵ所が中程度、IUCN管理カテゴリ(Ⅳ~Ⅵ)において2ヵ所が該当となりました。
サプライヤーについては、WDPA、KBAにおいて5社の生産拠点(供給拠点)が該当し、IUCNレッドリスト生物種数において高程度、中程度が各1社、IUCN管理カテゴリ(Ⅳ~Ⅵ)において1社が該当となりました。
■ IBATによる分析のまとめ
2025年3月31日現在
| 生産拠点名 | 範囲 |
【保護地域】 World Database on Protected Areas |
【KBA 重要な 生物多様性地域】 World Database of Key Biodiversity Areas |
【IUCNレッドリスト】 IUCN Red List of Threatened Species |
【保護地域】 IUCN管理カテゴリIUCN management category |
|||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| National | World Heritage | Ramsar | MAB | Important Bird And Biodiversity Areas | Species | IUCN Management | ||
| 全国 | 世界遺産 | ラムサール 条約湿地 |
ユネスコMAB | KBA | 生物種数 | IUCN Ⅳ~Ⅵ |
||
| 福島第一工場 |
50km (IUCNのみ1km) |
有 | 無 | 無 | 無 | 有 | 中 | 有 |
| 福島第二工場 | 有 | 無 | 無 | 無 | 有 | 中 | 有 | |
| 愛知工場 | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 | 低 | 無 | |
| 徳山工場 | 有 | 無 | 有 | 無 | 有 | 低 | 無 | |
| サプライヤー 8社 |
5社が有 | 0社 | 0社 | 0社 | 5社が有 | 中が1社 高が1社 |
1社が有 | |
| 有:該当、無:該当せず | 生物種数:低~高で評価 |
Global Forest Watch(GFW)分析
生態系の完全性、生態系サービスの提供にとって重要な地域を特定するために、GFWの以下の3つのツールを用いて分析しました。各項目(①~③)の特定に使用した指標は下記の通りです。
- ①生態系の完全性が高い地域の特定
Global Biodiversity Intactness(生物多様性の完全性) - ②生態系の完全性が急速に低下している地域の特定
Forest Landscape Integrity Index(森林景観完全性指数) - ③先住民、地域社会、ステークホルダーへの便益を含む、生態系サービスの提供にとって重要な地域の特定
Indigenous and Community Lands(先住民族・コミュニティの土地)
GFWによる分析結果(直接操業、バリューチェーン上流)
解析の結果、①でサプライヤー1社が該当、②で福島第二工場とサプライヤー1社が該当、③は該当なしという結果になりました。
■ GFWによる分析のまとめ
2025年3月31日現在
| 生産拠点名 | 生態系の完全性が高い 地域の特定 |
生態系の完全性が急速に低下 している地域の特定 |
先住民、地域社会、ステークホルダーへの便益を含む、 生態系サービスの提供にとって重要な地域の特定 |
|---|---|---|---|
| 福島第一工場 | 該当しない | 該当しない | 該当しない |
| 福島第二工場 | 該当 | ||
| 愛知工場 | 該当しない | ||
| 徳山工場 | 該当しない | ||
| サプライヤー8社 | 1社が該当 | 1社が該当 | 該当しない |
Aqueduct分析
水リスクの高い地域を特定するために、World Resources Institute (WRI) のAqueductの以下の3つの分析ツールを用いて、当社の水リスクベースライン(3=Medium-high以下の地域を非該当、4=High以上の地域を該当とする基準)に従い分析しました。
- ①Water Stress(水ストレス)
- ②Riverine Flood Risk(河川の洪水リスク)
- ③Coastal Flood Risk(沿岸部の洪水リスク)
■ Aqueduct分析(水ストレス、国内4生産拠点)
Aqueductによる分析結果(直接操業、バリューチェーン上流)
解析の結果、①でサプライヤー2社が該当、②でサプライヤー1社が該当、③は該当なしという結果になりました。
■ Aqueductによる分析のまとめ
2025年3月31日現在
| 生産拠点名 | 生態系の完全性が高い 地域の特定 |
生態系の完全性が急速に低下 している地域の特定 |
先住民、地域社会、ステークホルダーへの便益を含む、 生態系サービスの提供にとって重要な地域の特定 |
|---|---|---|---|
| 福島第一工場 | 該当しない | 該当しない | 該当しない |
| 福島第二工場 | |||
| 愛知工場 | |||
| 徳山工場 | |||
| サプライヤー8社 | 2社が該当 | 1社が該当 | 該当しない |
優先地域の特定(直接操業、バリューチェーン上流)
分析ツールやデータベースを使用して得た分析結果をもとに、以下のように優先地域を特定しました。
■ 優先地域のまとめ
| 生産拠点名 | 所在地 | 要注意地域の特定 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 生物多様性にとって 重要な地域 |
生態系の完全性 | 物理的な水リスクが 高い地域 |
重要な生態系 サービスの提供 |
||
| 福島第一工場 | 福島県郡山市 | 国内生産拠点は4ヵ所あり、いずれもIBATの複数の分析指標に該当している そのため、生物多様性の重要性は高いと考えられる | 生態系の完全性が高くはなく、急速に低下している地域ではない | 水リスクの高い地域ではない | 先住民、地域社会、ステークホルダーへの便益を含む、生態系サービスの提供にとって重要な地域ではない |
| 福島第二工場 | 福島県田村郡 | 生態系の完全性が高くはないが、急速に低下している可能性がある | |||
| 愛知工場 | 愛知県知多郡 | 生態系の完全性が高くはなく、急速に低下している地域ではない | |||
| 徳山工場 | 山口県周南市 | 生態系の完全性が高くはなく、急速に低下している地域ではない | |||
| サプライヤー (上流) |
8ヵ所 (世界) |
8社中5社は、IBATの複数の分析指標に該当している そのため、生物多様性の重要性は高いと考えられる | 8社中1社は生態系の完全性が 比較的高い、また別の1社は生態系の完全性が高くはないが、急速に低下している可能性がある |
8社中2社は水ストレスに該当し、1社は河川の洪水リスクに該当する地域である | |
Evaluate:自然への依存と影響の特定・評価
自然への依存と影響の特定
自然関連への依存・影響を特定するために、ENCORE※1を用いて調査し、それぞれヒートマップにまとめました。
※1:ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risk and Exposure)
金融機関のネットワーク「自然資本金融同盟」と国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)が共同で開発したツールで、潜在的な自
然への依存・インパクトのリストやフロー図等を入手することができる。
自然への依存と影響の評価
ENCOREによって得られた情報(ヒートマップ)をもとに、当社の直接操業、バリューチェーン上流(原料、燃料)における自然への依存度と影響度を評価しました。
自然への依存度については、直接操業とバリューチェーン上流(原料)においてすべての項目が中程度以下であり、サプライチェーン上流(燃料)において「水質浄化」が高いという結果になりました。
自然への影響度については、直接操業とバリューチェーン上流(原料)において「土壌・水質汚染物質」、「外乱(騒音、光など)」が特に高い、バリューチェーン上流(燃料)において「土壌・水質汚染物質」、「外乱(騒音、光など)」が特に高い、「GHG以外の大気汚染物質」が高いという結果になりました。
■ 依存に関するヒートマップ
■ 影響に関するヒートマップ
Assess:自然に関するリスクと機会の評価
リスクと機会の洗い出しにおいては、TNFDのガイダンスを参考にシナリオ分析を行いました。シナリオ策定にあたっては、市場と非市場の一貫性(移行リスク)、生態系サービスの低下(物理リスク)の度合いに基づき4つのシナリオに分けて分析しました。
右記の中で最も実現可能性が高いと考えられる「シナリオ2」を想定し、Locateで特定した優先地域とEvaluateで特定、評価した自然への依存度と影響度の調査結果を踏まえ、当社のリスクと機会の時間軸の定義※1を考慮し、当社にとって重要と思われる自然資本に関するリスクおよび機会を特定しました。さらに、特定したリスクや機会への対応策を、当社の事業内容、事業地域、バリューチェーンを考慮して検討しました。
※1:短期(3年未満)、中期(3年を超え10年先まで)、長期(10年を超え30年先まで)と定義している。
■ TNFDシナリオ分析
■ 自然に関するリスクと機会のまとめ
| リスク /機会 |
対象 領域 |
依存と影響の 重要な項目 |
リスク/機会の種類 | 発生 時期 |
リスク/機会要素 | 対応策 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リスク | 上流 | 自然関連の 規制の強化 |
移行リスク | 市場・技術 | 中・長期 | 原燃料生産地域における環境規制の強化により調達コストが上昇する | サプライヤーエンゲージメントを強化しサプライヤーと対応策を講じる |
| 水ストレス、洪水 | 物理リスク | 慢性 | 中・長期 | 原材料生産地域における水課題起因による供給の不安定さ | 調達地域およびサプライヤーの多元化により調達リスクを軽減させる | ||
| 直接 操業 |
温室効果ガスの 排出 |
移行リスク | 市場・技術 | 中・長期 | 生産活動起因のCO₂の量が減らせない場合、炭素税や排出権にかかわるコストが増加する | 生産性の改善、再エネの利活用や脱炭素設備の導入などによりCO₂排出量を削減させる | |
| 固形廃棄物の 発生と放出 |
移行リスク | 評判 | 長期 | 固形廃棄物縮減・循環経済に対する自治体・市民からの声が高まり、廃棄物処理費用が上昇する | 生産性の改善、リサイクルの促進などで固形廃棄物を減らす | ||
| 水の供給 | 物理リスク | 慢性 | 中・長期 | 生産に必要な水が確保できないことにより製品の製造が制限される | 水原単位の把握水の効率的な利用を進め水使用量を削減する貯水量の確保や水源の多元化により安定的に水を確保する | ||
| 洪水や暴風雨 | 物理リスク | 急性 | 中・長期 | 主要生産拠点において災害対策コストが発生する | 災害に備え普段から設備と緊急資材の補強を行う対応手順の標準化と教育・訓練を行う | ||
| 洪水や暴風雨 | 物理リスク | 慢性 | 長期 | 洪水により操業が停止あるいは生産量が減り売上げが減少、また製造設備に対する減損損失が発生する | 災害に備え普段から設備の補強を行う | ||
| 水質浄化 | 物理リスク | 慢性 | 長期 | 取水の水質が悪化することによる製品品質の低下や、水質を浄化するためのコストが発生する | 貯水量の確保、行政機関との協議 | ||
| 機会 | 上流 | カーボン ニュートラル |
移行機会 | 市場・技術 | 中・長期 | 原燃料サプライヤーにおける脱炭素化により環境規制をクリアする | サプライヤーの製造拠点における再エネの利活用 |
| 直接 操業 |
脱炭素関連製品の 開発・普及 |
移行機会 | 市場・技術 | 中・長期 | 脱炭素化市場の拡大に伴い、当社の環境貢献製品の売上げが増加し収益が向上する | 環境貢献製品の開発・販売促進、プロセスの改良、リサイクルの促進 | |
| カーボン ニュートラル |
移行機会 | 市場・技術 | 短・中期 | カーボンニュートラルへの取り組みがステークホルダーから評価され、市場での価値が向上する | 再エネの利活用や工程改良などにより当社製品に係るCO₂排出量を低減する | ||
指標と目標2. 自然資本
Prepare:対応と報告の準備
特定したリスク/機会の解析結果を踏まえ、さらに当社の中長期戦略を考慮して最も重要と思われる自然資本に関する指標と目標を選定しました。これらの課題に対してはマテリアリティに特定しKPIを掲げて取り組んでいます。社内リソースを適正に分配しながらKPIの達成を目指します。
■ 自然資本に関する指標と目標
| 項目 | 指標 | 目標 | 2024年度実績 |
|---|---|---|---|
| GHG排出量 | Scope1,2 | 2030年度のGHG排出量を 2020年度比で23%削減する |
18.8% |
| 環境貢献製品 対売上高比率 |
環境貢献製品として 社内認定した製品の売上げ |
2025年度の環境貢献製品 対売上高比率を14%以上とする |
11.3% |
その他の指標については、TNFDグローバル中核開示指標を参考に、今後開示を行うとともに、環境負荷の低減を図っていきます。
■ 依存と影響に関するグローバル中核開示指標
| 依存・影響の指標 | 範囲 | 単位 | 2022年 | 2023年 | |
|---|---|---|---|---|---|
| GHG排出量(Scope1+2) | 単体 | t-CO₂e | 60,319 | 50,545 | |
| 土壌汚染物質(PRTR対象物質) | 単体 | トン | 0 | 0 | |
| 水質汚染 | 排水量 | 単体 | 千m³ | 1,629 | 1,712 |
| COD | 単体 | トン | 5.6 | 7.1 | |
| 全りん | 単体 | トン | 3.4 | 3.2 | |
| 全窒素 | 単体 | トン | 13.3 | 14.6 | |
| PRTR対象物質 | 単体 | トン | 0.066 | 0.056 | |
| 廃棄物 | 産業廃棄物総排出量 | 単体 | トン | 9,056 | 11,732 |
| 特別管理産業廃棄物総排出量 | 単体 | トン | 4,193 | 6,141 | |
| 焼却処分 | 単体 | トン | 3,384 | 5,157 | |
| 埋立処分 | 単体 | トン | 757 | 1,719 | |
| その他の処分方法 | 単体 | トン | 1,581 | 1,654 | |
| 処分方法不明 | 単体 | トン | 0 | 0 | |
| リサイクル量 | 単体 | トン | 3,322 | 3,290 | |
| 大気汚染 | 揮発性有機化合物 (VOC) | 単体 | トン | データなし | データなし |
| NOx | 単体 | トン | 10.8 | 11.5 | |
| SOx | 単体 | トン | 0.9 | 1.2 | |
| ばいじん | 単体 | トン | 2.5 | 2.5 | |
| PRTR対象物質 | 単体 | トン | 4.2 | 1.7 | |
| コンプライアンス違反 | 単体 | 件 | 0 | 0 | |
| 製造過程における有害廃棄物のリサイクル | 単体 | % | 0.468% | 0% | |
| 使用済み有害廃棄物のリサイクル | 単体 | % | 36.2% | 27.8% | |
今後もTNFDフレームワークを参考に当社の気候変動、自然資本に関する積極的な情報開示を行っていきます。また、ステークホルダーの皆さまとの対話を通じてサステナビリティ活動の改善・推進を図り、持続可能な社会の実現を目指していきます。
具体的な取り組み
森林保全活動
徳山工場では、1997年より周南地区で行われている「まちと森と水の交流会」(森林保全活動)に毎年参加し、この活動を通して森林の持つ水源かん養機能や地球温暖化防止機能について学んでいます。今後も地域社会の一員として森林保全活動を推進し、生態系の維持に努めてまいります。
地域の環境保全活動
当社では、事業所近隣の市街清掃および海岸やダム周辺の清掃を行っています。
